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2022/12/21

インタビュー

インタビュー

『澄壇』のつくりて 北川大輔

多様な偲びの心を受け入れる「無垢な場所」として、全面に硝子を用いて作られたお仏壇『澄壇』。
制作を手掛ける株式会社DESIGN FOR INDUSTRYの北川大輔さんに『澄壇』に込めた想いを伺いました。

株式会社 DESIGN FOR INDUSTRY

北川 大輔

https://www.designforindustry.jp/

2005年に金沢美術工芸大学を卒業。家電メーカーを経て、2015年に株式会社DESIGN FOR INDUSTRYを設立。関わる全ての人とともに分かち合える“喜び“を創り出すことを信条に、家具や日用品から伝統工芸、家電、ロボット、先端技術研究開発、新素材開発、ビジネス開発、都市ブランディングなど国内外・問わず多彩な領域にて、“心地よい革新“という視点のもと、デザイン・クリエイティブディレクションを行う。
GOOD DESIGN AWARD、GERMAN DESIGN AWARD winner、iF DESIGN AWARDなど受賞多数。

1982年  滋賀県生まれ
2005年  金沢美術工芸大学デザイン科製品デザイン専攻を卒業
2005年- 国内大手家電メーカー勤務
2011年  DAISUKE KITAGAWA DESIGNとして活動を開始
2015年  株式会社DESIGN FOR INDUSTRYを設立
2015年- 金沢美術工芸大学 非常勤講師
2016年- 東北芸術工科大学 特別講師

―はじめに、『澄壇』が生まれるまでの背景とストーリーを教えていただけますか?

新しくも相応しい祈りのかたちを。そんな想いからこの澄壇は生まれました。
生活様式の変化や祈りの多様化から、都市部を中心に仏壇のかたちは時代と共に益々変わってきています。そんな変化と多様性に富んだ現代において、新しくも相応しい仏壇とはどんなものかを考え、形状はもちろん「素材」から見つめ直すことで、ひとつのかたちを見出しました。澄壇は、多様な祈りを受け入れることの出来るシンプルさでありながら、必要な設えを持った硝子の仏壇です。革新的でありながら仏壇としての機能と佇まいを損なわないよう全体から細部に至るまで丁寧にデザインし、かたちにしました。

―つづいて、『澄壇』に対するこだわりを教えていただけますか?

澄壇では、従来の仏壇にはない“無垢で神聖な印象”と“日常生活に馴染む佇まい”をと考えた末、「硝子」という素材に辿り着きました。現代では身近な硝子も、仏教における“七宝”の一つとしてなど古来より神聖な素材として珍重されてきた歴史があります。厳かな暗さや重厚感といった従来の一般的な仏壇の印象とは異なり、澄壇は光を以って今までにない無垢で神聖な”祈りの場”をもたらしてくれます。

―では、『澄壇』について北川さんが一番気に入っているところはどこでしょうか?

澄壇は、全てが硝子のみで構成されています。透明な硝子同士を45°で繋ぎ、端部を表出させない「トメ加工」と呼ばれる職人の高い技術によって構成されている躯体は、硝子の美しさを最大限に活かすと共に、格調高い設えを感じさせてくれます。シンプルで誤魔化しの効かない素材を用いて細部まで徹底的にこだわることで、美しく清浄な佇まいを実現しました。

―『澄壇』で美しいと感じているところはどこでしょうか?

「硝子」という素材の特性を充分に活かし、光の反射/屈折/透過を用いて、簡素でありながらも豊かで美しい表情を生み出しているところです。日常の中にあっても見る角度や差し込む光によって、常に異なる表情を見せてくれる澄壇。惹き込まれるほど豊かな表情や緊張感、時折見せるプリズムの輝きは今までにない清らかな美しさを以って、心地よい偲びの体験をもたらしてくれます。

―北川さんのお仕事の流儀について教えてください。

私は日々、「真・善・美」の心持ちでお仕事に取り組ませて頂いております。
新しさ、美しさ、使いやすさはもちろん、“そもそも”どうあるべきか。どうすべきか。広く長い視座で与えられた課題の本質を見出し、最適かつ持続性のある価値を描き出し、社会や生活に溶け込む「心地よい革新」を創造したいと考え、様々な課題に取り組んでいます。
また、私たちのデザインを通じて関わる全ての方々と、共に分かち合える“喜び”を創り出したいと考えています。いまある課題を解決するだけでなく、いままでにない視点や手法をもたらすことによって、未来に繋がり拡がる「新たな可能性」を協業者と共に築くこと。それによって社会や産業から日々の生活まで、より良く豊かな暮らしの実現に貢献すること。それらを目指し実現するため、全体から細部に至るまで「真・善・美」の心持ちで、デザインに取り組ませて頂いております。

旭川と京都の産地間連携ブランド「pirkamonrayke(ピリカモンライケ)」

―最後に、北川さんにとって「偲び」とは何でしょうか?

「偲び」とは、大切な故人を想う行為であると同時に、自分自身を顧みる行為でもあると、私は思います。手を合わせ「人」を「思」う。そこには、過去の記憶や思い出を振り返り忘れないということのほかに、自らの今を報告し、これからについて考え伝える、ということも含まれているのではないでしょうか。そうして、「過去、現在、未来」に想いを馳せ、心穏やかに日々に向き合える心持ちを保つということが「偲び」ではないかと私は思います。

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