2021/11/30
エッセイ
おいしいお供え#2 永楽屋の「琥珀 柚子」
一緒に食べた思い出の味、旅先で見つけた小粋なお菓子。
今日はおいしいお供えとともに、お仏壇に手を合わせませんか。
妻の合格点
[ 京都府 永楽屋の「琥珀 柚子」]
妻との出会いは、7月の終わりの、かなり暑い日。蝉の声が響く路地裏のギャラリーの前に立っていた彼女は、どこまでも透き通っていて、そこだけ空気が違うようでした。真っ黒なワンピースから、しなやかに伸びる白い手足。真夏の日差しの中、まるで暑さを感じさせない涼しそうな表情。その透明感に、私は一瞬で恋に落ちました。
結婚してからも、彼女はいつも凛として折り目正しく背筋を伸ばし、いつもひょうひょうとしていました。
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私は仕事で全国に出張に行っていましたが、いつも悩むのが、彼女への「お土産」でした。センスが良く、無駄を嫌う彼女。対して、私は自分のセンスに自信がありません。私がなにをプレゼントしても喜んでくれましたが、そんな彼女から、お土産で心から褒められたいという気持ちがあったのです。
京都出張で永楽屋の「琥珀」というお菓子を見つけたときは、これだと思いました。
家に帰り、食卓でお土産を渡すいつもの儀式。箱をあけた彼女は少し驚いた様子です。
しっかりと整った透明な寒天の中で、すっと伸びる直線の柚子。想像よりしゃりっとした歯ごたえの後、柚子の爽やかで甘い香りが口の中にひろがります。彼女は、目をまるくして驚き、そして微笑みました。
センスのいい彼女に、はじめて合格をもらった気がしました。
はじめて会った日の涼しそうな顔。いつも凛とした透明感をまとっていた立ち姿。時々見せる、目をまるまるさせて嬉しそうに驚く表情。
「琥珀 柚子」をお供えし、手を合わせたあと、私はすぐにお下がりをいただきます。最初のシャリシャリした歯ざわりからの、優しい柚子の味わいの「驚き」は、いつ食べても新鮮に感じます。
さあ。私もシャキッと背筋を伸ばして、また彼女に褒めてもらえるように頑張らないと。
本店:京都市中京区河原町通四条上る東側
TEL:075-221-2318
営業時間:10:00~19:00(年中無休)