2022/01/21
エッセイ
おいしいお供え#4 湯布院 ジャズとようかんの「ジャズ羊羹 classic」
一緒に食べた思い出の味、旅先で見つけた小粋なお菓子。
今日はおいしいお供えとともに、お仏壇に手を合わせませんか。
あの時のジャズピアノ
[ 大分県 湯布院 ジャズとようかんの「ジャズ羊羹 classic」]
いつもハキハキと気持ちよく、食べるものと着るものには気を遣っていた妻。3人の子どもを育てる忙しい毎日でも、「食卓は賑やかなほうがいいでしょ」と、テーブルには必ず何品かの小鉢が並びました。
いつもはクールな妻でしたが、時折、上機嫌で鼻歌を歌うことがありました。娘が学芸会で大きな役をもらった時、新しい洋服を買った時。台所から、ささやかな鼻歌が聞こえてきました。
歌うのは、私が初めてプレゼントしたレコードの曲。静かなジャズのピアノ曲です。それを聴くたびに私はじんわりあたたかい気持ちになったものでした。
秋に、娘家族がとっておきのお菓子を持って帰ってきました。
鮮やかな赤いゴムを外して黒い箱を開けると、中に入っていたのは、ピアノの鍵盤をあしらったお洒落なようかん。
「お母さん、いつも料理しながら鼻歌歌っていたじゃない?」
小さく切り分けてお皿に盛り付けると、深い茶色の断面に大きないちじくが覗きました。
娘家族を見送った後、静かになった部屋で久しぶりに開けたワインのボトル。昔のようにテーブルに2つのグラスを並べてようかんを口に運ぶと、なめらかな舌触りの中でいちじくがプチプチとはじけ、黒糖の上品な甘みとともにいちじくの濃厚な味わいが広がりました。
娘たちは、妻が歌っていたメロディーが、私が贈った曲だとは知らないでしょう。私たち2人の大切な記憶に娘の新しい記憶が重なって、積もっていく。その繰り返しで思い出は、もっとあたたかく、もっとずっしりとした質量を帯びてくるものなのかもしれません。
深みのある上品な味わいと、甘酸っぱさ。ようかんの白い鍵盤を眺めながら大切な記憶を慈しむとき、私はそんなことを思うのです。
湯布院本店:大分県由布市湯布院町川上 3015-4
TEL:050-3538-0943(コールセンター)
営業時間:9:30~17:30(季節により変動あり)
定休日:不定休
ワインに一昼夜漬け込んだドライいちじくと甘さ控えめの羊羹が調和する、美しく華やかなお菓子