#5 ショコラティエ川路の「和ショコラ」

一緒に食べた思い出の味、旅先で見つけた小粋なお菓子。
今日はおいしいお供えとともに、お仏壇に手を合わせませんか

2粒のチョコレート

[ 東京都 ショコラティエ川路の「和ショコラ」]

祖母と私は料理仲間でした。私は週末になるたびに祖母の家に行って、一緒にご飯を作りました。
はじめては、まだ私が小学生の頃。お正月のお雑煮を一緒に作ったときのことです。

その日、祖母が私を台所に誘うのを母は少し心配していた様子でした。

それでも、からからと笑いながら「できるわよ」と私の顔を覗き込んでくれた祖母。子ども用の踏み台に立った時のワクワク感を今でも覚えています。祖母は私の手をそっと“猫の手”にして、私がどんなに手間取っても根気強く教えてくれました。

できあがると祖母は、とびっきりのお椀を用意してくれました。
漆の地に、桜や松、市松模様があしらってあるハレの日の器です。
今思うとお雑煮の出来はあまり良くありませんでしたが、その器に注ぐとなんだか立派で、誇らしかったのです。

ひと口食べると「ほら、できたでしょう」と祖母は得意げに母の方をちらりと見て、私たちはくすくす笑い合いました。

先日浅草へ行ったとき、「和ショコラ」というお菓子を見つけました。
ショーケースの中の四角い箱には、きちんと並べられた端正なチョコレートたち。表には、桜や松、梅などさまざまな絵柄があしらってありました。
あの日のお椀みたいに、上品で華やかで、わくわくするような佇まいです。
私はつま先立ちでショーケースを覗いて、ひとつ、指をさしました。

今日のお供えには、桜と松の柄の「和ショコラ」を選びました。

小さなお皿に載せてお供えし、手を合わせたあと、私もお下がりをいただきます。
口にいれるとなめらかに溶け、チョコレートのこっくりとした甘みの中に、柚子や、黒蜜きな粉など、和を感じる素材の香りが口一杯に広がりました。
思わず顔がほころぶ、なつかしくてやさしい味わい。

食べ終えたあと、お茶目な祖母に誘われた気がして、私はもう一粒「和ショコラ」を口に運んだのでした。

Store information

ショコラティエ川路

https://chocolatier-kawaji.com

住所:東京都墨田区吾妻橋1丁目7-12
TEL:03-6658-8480
営業時間:11:00~19:00
定休日:水曜日・第3水曜日の次の木曜日

ショコラティエ川路

和ショコラ

https://okashi-mania-shop.com/SHOP/2021-001.html

日本の食材を使用し伝統的な和柄をあしらった、上品で華やかなチョコレート