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2022/08/09

インタビュー

インタビュー

「NEW SCENE vol.2 祈りをつなぐ 伊豆野一政〈新しい祈りのかたち〉」

祈りの道具屋 まなか 横浜元町ショールームでは、2022年8月18日(木)から9月25日(日)まで、企画展「 NEW SCENE vol.2 祈りをつなぐ 伊豆野一政〈新しい祈りのかたち〉」 を開催いたします。

この時代の“祈り”とはなにか?今の暮らしに寄り添う“祈り”の景色を求め、「NEW SCENE 祈りをつなぐ」と題し、“今を生きるわたしたちの生活に寄り添う祈り”というテーマにて、今を生きる作家との企画展を開催していくこととなりました。
“毎日の祈りが続いていきますように”という想いをもって、作家たちの作品、視点とともに、“祈り”と対話し、ここから広がる“祈り”のある景色をお届けしたいと思っております。

第2回目に開催するのは陶作家 伊豆野一政による〈新しい祈りのかたち〉。
「祈り」とは、自然、祖先を敬い、感謝し、時には畏れを未来へと伝える行為。
「表現」もまた、“過去→現在→未来”の繰返しの中で 、過去の意志を振り返り、思考を深め、その先に新たな意志をつなぐ行為であり、それぞれの根幹に在るものは「想像力」であろうと思います。
作品をつくること自体がそもそも「祈り」のようなものであると語る、陶作家 伊豆野一政氏が「想像が生まれる形」を制作し、本展にて、一人ひとりがその作品から考えや思い、ストーリーを想像することで〈新しい祈りのかたち〉が生まれると考えました。
時代背景、地域、個人的な想いや状況によって、あらゆる想いと移ろいでゆく〈新しい祈りのかたち〉。
一人ひとりの中で生まれていくことが源流となり、祈りをつないでいく未来になっていくのではないでしょうか。

企画展開催に先駆けて、伊豆野さんご自身にお話しをお伺いしました。
展示と合わせてご高覧いただければ、幸いです。


陶作家

伊豆野 一政

https://www.instagram.com/ikkyuizuno/

1974年秋田県生まれ。1999年京都造形芸術大学デザイン科情報デザイン 卒業。
大学卒業後、禅の思想を学ぶために、茶陶の大家である寺外窯(てらがいどうがま)杉本貞光に入門。2005年に独立。

【主な出展】

[個展]
2018 個展「贋者」(白白庵 / 東京)
2019 個展「クロノス ~時の翁~」(伊勢丹新宿本館/東京)
2019 個展 「SHINSO」(白白庵 / 東京)
2019 個展(窓枠/秋田)
2020 個展(織部下北沢/東京)
2021 個展 「HIGAN」(白白庵 / 東京)

[参加企画、企画展]
NEXT5hyougemono2018コラボレーション企画(NEXT5・講談社)
メディア芸術祭海外展開事業 (文化庁・講談社/スペイン)
神戸アートマルシェ
KOGEI Art Fair Kanazawa
企業向けワークショップ
書籍装丁 等

生きて行く為に誰かを、何かを、
思い出すきっかけになるものであって欲しい

―伊豆野さんの作品「祈る人」をはじめ、昔からの縁起物や動物などのちょっと意外なキャラクターの像を「祈りの形」として提案されていますが、伊豆野さんは“新しい祈り”についてどう思われますか?

縋るものではなく、誰かが何かをしてくれた上に成り立って生活をしているので、生きて行く為に誰かを、何かを、思い出すきっかけになるものであって欲しいと思います。
父が亡くなって悲しいという気持ちではなく、亡くなった父があんなことをしてくれたな、自分はどういったことができるであろうか?というような発想の転換のような、新しい行為や想いの生まれるきっかけになれば。

―伊豆野さんと陶芸の接点についてお伺いします。学生時代はグラフィックデザインを学ばれ、デザイナーを志していらしたと記事で拝読いたしましたが、どのような経緯で今のような陶芸作家として活動されることになったのでしょうか?

学生時代を過ごした京都では神社、仏閣を初め数百年を超える美術品やお店や習慣を日常的に目にする多く機会があります。
眺めている内に不思議と、作者、創業者の意図が見えてくる様になります。
そう言った時間を超えて意図を伝えるものに憧れたのが始まりです。
その中でも、禅の思想を宿す茶陶に惹かれ、禅僧の師を持つ茶陶作家に師事することになりました。

―伊豆野さんの作品はとにかくとてもユニークで親しみやすいお姿をしていらっしゃいますが、作品の題材はどのように選び、どのようにイメージして形作られていくのでしょうか?

可愛くなり過ぎないよう、また彫刻のように神々しくなり過ぎない塩梅を探っています。
日常からかけ離れていない身近なモチーフを選んだり、民話や説話に登場する主人公を題材にすることもありますが、季節を代表する動物など。
日常の節目を思い出すことの出来る題材が個人的には好きです。

―ご自身の作品の中で、どうしても手放せない(販売したくない)ものはありますか?それはどんな作品でしょうか?

手放したくない作品はありません(笑)。
形に残る表現は長い時間を掛け、誰かと作者が対話をする道具になります。
そんな対話の始まりは大歓迎です。
また制作中は自分と制作物との対話の時間でもあります。
対話が終わった時点で作品として完成になるわけです。

―作品を制作する際、気にかけていらっしゃることなどありますか?また、決まったルーティンなどありますか?

先程の問いと話が重なりますが、気に掛けていることは対話が成立するかどうか?
展示会にご来場のお客様、また10年20年その先にも対話が出来る可能性を秘めているかどうか。そんな事を気に掛けています。
ルーティーンは手を動かす前に、徹底的にイメージを固める様にしています。

―伊豆野さんは元々麻布のマンションの一室にて活動をされていたとお聞きしました。今現在は埼玉で活動されていますが、どのように活動拠点を選ばれていらっしゃるのでしょうか?

以前、東京都心で活動していたのは。様々な立場、職種の人達がいて考えや価値観も多様です。
またそれに寛容な街でもあり、変化を楽しむ人達、変化を起そうと奮闘する人達が大勢いたからだと思います。
対話を持ち掛ける立場の者としては、完全に山に籠るのはもう少し先の方が良いと思っています。

―今回は祈りの道具屋まなかのお仏壇にあう本尊としての作品を、特別に制作していただきました。ご供養にとって大切なことは「大切な人を想うこと、祈ること」で、その習慣さえあれば、ご供養の方法や形は、人それぞれ、やりやすい方法で良いと思っています。その習慣や想い、祈りが、これからを生きる私たちを支え、最終的には自他を想う心が育まれると考えていますが、ご供養という習慣について、どう思われますか?

ご供養というのは、「亡くなった人のことを想う。何をしてくれたか?何を残してくれたか?どうゆう社会を築くために、先人達は頑張ってきてくれたのか?」そういったものを受け止め、では、自分たちは今、何をすべきか?と未来を見つめて、残すべきものについて考える。
亡くなった人がしてくれたことに感謝して、今生きている人たちは自らでがんばるために、後ろを向かずに前を向くために、亡くなったことに対する悲しみや未練のようなものは断ち切ることも大切だと思っています。

伝統や表現は、
利他の元に成り立っている。

―伊豆野さんご自身は日々の暮らしの中で、祈ること、偲ぶことはありますか?

無意識ながらも、改めて考えて見ると日常的にある様です。
伝統とは何かと問われることがありますが、
先人達の残した物事に観察と考察を重ね、思いを汲み取る。
それを吸収し、また現在を生きる者としての思いを重ね、伝える試みをする。
伝統や表現と言うものを、そう捉えています。
利他の元に成り立っているわけです。

―伊豆野さんご自身の祈りを作品として表現するということはないのでしょうか?

作品コンセプトも祈りも全て一緒です。
自然の中では、ゴツゴツした荒々しい岩肌だからこそ、水の流れを瑞々しく写し出し、静かなる冷たい土から顔を出すからこそ、花や葉がより一層鮮やかに写し出される。
制作しているお茶道具、器、花器は「お茶を入れて、お茶の色が鮮やかに見える。お花を活けて、お花が美しく見える」というお互いが支え合う、“支える”という目的、“満たされる”という役目があって、一つの和が成立する。
基本的に禅の思想、「自然性」と呼ばれるもの、利他的なものを凝縮されたものを作っているので、作品を作ること自体がそもそも祈りのようなものだと思っています。修行でもありますし。

―作品を手にされた方にとって、作品をどのように感じて欲しいでしょうか?

その方にとっての御守りのような、気持ちの休まる物になってくれれば幸いです。

―今後新しくチャレンジしてみたい作品やジャンルはありますか?

今は見えませんが、きっとまた新しいチャレンジがあると思います。

伊豆野さんの視点や言葉の中にも〈新しい祈りのかたち〉を見つけるヒントがたくさんありました。貴重なお話しをありがとうございました。

この機会に、伊豆野さんの作品との対話をはじめてみてはいかがでしょうか?
ご自身の想像から生まれる〈新しい祈りのかたち〉を見つけに、是非お越しください。

「NEW SCENE vol.2 祈りをつなぐ 伊豆野一政〈新しい祈りのかたち〉」
2022年8月18日(木)~9月25日(日)
10:30~18:00
定休日 月曜日・火曜日・水曜日 ※祝日は営業いたします。
祈りの道具屋 まなか 横浜元町ショールームにて開催

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写真提供:伊豆野一政