2022/10/11
インタビュー
インタビュー『虎空檀』のつくりて 手塚貴晴 + 手塚由比
重厚かつどこか暖かみのある、故人への尊敬と魂を籠めるにふさわしいお位牌『虎空檀』。
制作を手掛ける手塚建築研究所の手塚貴晴さん、手塚由比さんに『虎空檀』に込めた想いを伺いました。
グッドデザイン金賞(2回)、日本建築学会賞、日本建築家協会賞、世界環境建築賞(ユネスコ)など国内外で多数受賞。活動はNHKドキュメンタリープロフェッショナルなどで広く紹介されている。
勝林寺本堂納骨堂/巣鴨では、曼荼羅の空間を模した永久墓を設計。一柱一柱が燈明に照らされた幻想的な空間を作り上げている。
手塚貴晴
1964年 東京都生まれ
1987年 武蔵工業大学卒業
1990年 ペンシルバニア大学大学院修了
~1994 リチャード・ロジャース・パートナーシップ・ロンドン勤務
1994年 手塚建築企画を手塚由比と共同設立
(手塚建築研究所に改称 1997/07)
2009~ 東京都市大学教授
手塚由比
1969年 神奈川県生まれ
1992年 武蔵工業大学卒業
~1993 ロンドン大学バートレット校(ロン・ヘロンに師事)
1994年 手塚建築企画を手塚貴晴と共同設立
手塚貴晴+手塚由比/手塚建築研究所
http://www.tezuka-arch.com/japanese/
―はじめに、『虎空檀』が生まれるまでの背景とストーリーを教えていただけますか?
始まりは手塚貴晴の父親の他界に始まります。建築家であった手塚義男の為に、デザインの良い位牌を探し始めました。ところが丁度良いデザインが見つかりません。伝統的な位牌は飾りが多すぎて、良いデザインを終生追い求めた父親には相応しくありません。一方デザイナーが手がけた作品は形が凝り過ぎていて、落ち着きがありません。考えあぐねた挙句、自らデザインすることにしました。
―『虎空檀』に対するこだわりを教えていただけますか?
位牌は魂を籠める為にあります。故に魂に相応しい尊厳を備えていなければいけません。虎空檀は選び抜かれた無垢の黒檀から、一つ一つ職人の手で削り出され磨き上げられています。黒檀は水に沈む程に重く、時と共に重厚さが加わり尊厳を増します。塗装では決してえることのない奥行きが漂っています。
―つづいて、『虎空檀』で一番気に入っているところはどこでしょうか?
親しみやすさです。適度な重さと手触りが魂の大切さを確かなものにしています。
―では、『虎空檀』で美しいと感じているところはどこでしょうか?
材質感です。無垢の木には変わらない価値観があります。
―手塚さんのお仕事の流儀について教えてください。
ありそうでなかった当たり前のこと。新しいながらも誰もが親しみを持って迎えられるデザインを目指しています。
良きデザインは形を超え、人々の生活や社会を変える力を持っていると信じています。
「ふじようちえん」©手塚建築研究所
―最後に、手塚さんにとって「偲び」とは何でしょうか?
偲びとは故人の美しき思い出を末長く温める行為だと考えます。虎空檀は台座から外し手に取り温めることができるように作られています。角が丸みを帯びた無垢の黒檀は、人肌に馴染み触れれば触れるだけ親しみが出ます。虎空檀は仏壇から出て、変わらぬ家族の一員として日常を共にすることができます。故人との思い出を求め、魂の籠った虎空檀を懐に旅に出ることもできます。
「勝林寺納骨堂」©手塚建築研究所