2022/02/15
インタビュー
インタビュー『偲シリーズ』のつくりて 鈴木啓太
現代らしい自由な偲び方を実現するために生まれた『偲シリーズ』。
制作を手掛ける株式会社 PRODUCT DESIGN CENTERの鈴木啓太さんに『偲シリーズ』に込めた想いを伺いました。
1982年生まれ。多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業。PRODUCT DESIGN CENTER代表。古美術収集家の祖父の影響で、幼少より人が織りなす文化や歴史に興味を持つ。森林活用から都市環境、伝統工芸から3Dプリンティングなどのアディティブ・マニュファクチャリングまで、幅広い分野に精通。美意識と機能性を融合させたデザインで、国内外でプランニングからエンジニアリングまでを手掛ける。
2008年「TOKYO MIDTOWN AWARD」受賞、2016年「HUBLOT DESIGN PRIZE」初のアジア人ファイナリスト、2018年初個展「鈴木啓太の線:LINE by Keita Suzuki」を柳宗理記念デザイン研究所で開催、2019年「相模鉄道20000系」が「ローレル賞2019」受賞、2020年「ELLE DECOR Young Japanese Design Talent」受賞等。2015-2017年グッドデザイン賞 最年少審査委員。
―はじめに、『偲シリーズ』が生まれるまでの背景とストーリーを教えていただけますか?
2012年の春に、まなかさんと知人を通じて出会いました。「世の中に欲しい仏壇がない」という共通の想いを持っていたことから、「だったら自分たちで作ろう」と、プロジェクトが始まりました。
―『偲シリーズ』に対するこだわりを教えていただけますか?
従来の仏壇は、特に都心部に暮らす人たちには、大きすぎるものでした。そこでまず、現代の住居に合わせたサイズを一から検討し、素材や仕上げも、よく吟味しました。シンプルでありながら、必要な機能もきちんと満たすことにもこだわりました。伝統的でありながら、従来品にはない革新的な工夫が随所に凝らされています。
―つづいて、『偲シリーズ』で美しいと感じているところはどこでしょうか?
全ての製品において、工芸品のように、細部がとても美しく出来ています。特に気に入っているところは、仏壇と厨子で使われている「竹」の風合いです。和室は勿論、洋室に置いても気持ちの良い素材です。これまでの仏具にはあまり見られないものですが、竹は古来から神聖な植物でもあります。実は、仏壇にはぴったりの素材なのかもしれません。また、来年創立100年を迎える富山県の老舗「能作」による仏具も、とても美しいものです。
―鈴木さんのお仕事の流儀について教えてください。
今の世の中は、本当に気に入っているものを手に入れて、長く使っていきたいと多くの人が思っています。そのような思いに応えられるものを作るためには、形であれ、機能であれ、先ずはしっかりと、既に世にあるものを考察し、そのものにとって本当に必要なことを見極めなくてはなりません。その上で、必要な機能は足したり、逆に不必要な機能はそぎ落とし、日本の商品なら日本人に合わせて調整したり、あるいは環境問題などの時代の要請に対応できるような素材にしたり、といったことを考えて、新しい形に落とし込んでいきます。「偲」シリーズをデザインする上でも、今ある様式を生かしながら、ほんの少しだけ手を加えることが大切だと考えました。一目見たときに、仏壇だとわからないものは、戸惑いの対象になってしまうからです。誰もが見たことのない「新しい」仏壇をデザインしようと意気込むのではなく、従来の仏壇の良いところは継承しながら、より安心してお使い頂けるように、細部まで丁寧に考証しデザインしました。
―最後に、鈴木さんにとって「偲び」とは何でしょうか?
なんでしょうか。「いつも忘れないこと」だと思います。
「ONE FLOWERWARE」
Photographer :Yudai Kusano
「UNEXPECTED BEAUTY 2019」